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鍛冶の母

 

作品No:24

著者:田中貢太郎

(たなか こうたろう)

 

所要時間:約6分

 

 

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ハイライト

「あれが狼じゃ、狼でもわしが控えておるから、大丈夫じゃ、心配せんでも好い」と、飛脚は落ちついて煙草を喫んでいた。
 物凄い狼の声がもう脚下の方に起って、四辺あたりが一面に物騒がしくがさがさと鳴りだした。
「来たな」と、飛脚は煙草の吸い殻を下に落して、煙草入をさし刀の目釘をしめして待っていた。
 狼の群は二人のあがっている樹の周囲まわりをくるくると廻りはじめた。そして、廻りながら吠え立てた。

 作品について

 山の中で妊婦を助けた飛脚は、周りを狼に取り囲まれてしまう。 果敢に戦い、狼を打ち払う飛脚。敵わないと見た狼たちによるものか、怪しい声が聞こえ始める「佐喜の浜の鍛冶の母を呼うで来い」…しばらくして、飛脚のところに1匹のひときわ大きな狼が姿を現した。

 

水菓子屋の要吉

 

作品No:23

著者:木内高音

(きうち たかね)

 

所要時間:約5分

 

 

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ハイライト

「こんなにならないうちに、なんとかして売ってしまうわけにはいかないもんでしょうか。安くでもして……。」
 そうすると、おかみさんは、要吉をにらみつけていいました。
生意気おいいでないよ。なんにもわかりもしないくせに。そうそう安売りした日にゃあ商売になりゃあしないよ。」
「でも……」要吉は、もじもじしながらいいました。
「すてっちまうくらいなら、ただでやった方がまだましですね。」

 作品について

 水菓子屋(果物屋)で働く幼い要吉は、無駄にされる果物の数々に憤りを覚えていた。

どうせ棄てるものなのに、なぜ貧しい人たちにあげてはいけないのか…

現代でも全く色褪せない大きなテーマを、童話を通して描いた良作。

 

最後の一枚の葉

 

作品No:22

著者:オー・ヘンリー

(結城浩 訳)

 

所要時間:約9分

 

 

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ハイライト

「最後の一枚が散るのを見たいの。もう待つのは疲れたし。考えるのにも疲れたし。自分がぎゅっと握り締めていたものすべてを放したいの。そしてひらひらひらっと行きたいのよ。あの哀れで、疲れた木の葉みたいに」

 「もうおやすみなさい」とスーは言いました。「ベーアマンさんのところまで行って、年老いた穴倉の隠遁者のモデルをしてもらわなくっちゃいけないの。すぐに戻ってくるわ。戻ってくるまで動いちゃだめよ」

 作品について

 オー・ヘンリーの最も有名な短編小説。さまざまな媒体に取り上げられ、知名度も高い。

肺炎にかかったジョンジーは、窓から見えるつたの葉が散ったときに自分も死ぬのだと思い込んでいた。いよいよ葉が残り少なくなった夜、強い風雨となった。

次の日の朝、看病していたスーが窓を開けると…

 

やどなし犬

 

作品No:21

著者:鈴木三重吉

(すずき みえきち)

 

所要時間:約7分

 

 

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とうとう一週間たちましたが、犬は毎日同じように、もらった肉を食べないでもっていきます。肉屋は、一たいああして肉をくわえてどこへもっていくのだろう、一日中おれのところにおりながら、どうして夜はきまって、ほかのところで寝るのだろうと、店のものたちと話し合いました。
「おいおい、きょうもまた食わないでもってったよ。一つあとをつけてって見よう。来な。」と、肉屋は或日あるひ店のものの一人をつれて、ついていきました。

 作品について

 夏目漱石と親しかった鈴木三重吉の児童向け文学作品。 漱石の「文鳥」や三重吉の作品群を見てわかるとおり、動物好きの一面が見られる。

本作は肉屋に居ついた「やどなし犬」の心温まる行動を描いている。

筆者の動物に対する優しいまなざしが伺える、児童文学の傑作。

 

蝉の美と造形

 

作品No:20

著者:高村光太郎

(たかむら こうたろう)

 

所要時間:約5分

 

 

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ハイライト

トンボには銀ヤンマのような堂々たる者もあり、トオスミトンボのような楚々そそたる者もあり、アカトンボのようなしゃれた者もあって、一寸彫刻に面白そうに思えるが、これがやはり駄目。彫刻的契機に乏しい。作れば作れるが作るとかえって自然の美と品位とをそこない、彫刻であるよりも玩具に近い、又は文人的骨董に類するものとなる。其点でセミは大に違う。彼はその形態の中にひどく彫刻的なものをそなえている。しかも私が彼を好むのはむろん彫刻以前からの事である。

 作品について

 彫刻家また詩人として名高い高村光太郎の短文エッセイ。 数多の昆虫の中でも、蝉が特に彫刻的造形美に優れているという。

小説ではないが、非常に含蓄に富んだ文章のため収録。

 

喫煙癖

 

作品No:19

著者:佐々木俊郎

(ささき としろう)

 

所要時間:約1分

 

 

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「ほう! その頃の札幌を御存じなのですか?」
「そりゃよく知ってまさあ。停車場に売店というものが出来て何かいろいろの物を売っていましたっけが、そこに可愛い娘が一人座ってましてなあ。私あ、その娘の顔を、一日として見ないじゃいられなくなりまして、毎日そこへ、煙草買いに行ったもんでさあ。何しろ子供のことですから、小遣い銭なんかろくろく持ってないんで。煙草なんかも贅沢なことでしたが、何しろその娘の顔を見ないじゃ、一日としてっとしていられないもんですからなあ。

 作品について

 馬車の中で知り合った煙草好きの爺さんと婆さん。 昔話を語るうち、爺さんが煙草を好きになった動機を語りだす。その動機とは、駅の売店の娘へ一目惚れしたことだった−

しみじみとした読後感を短時間で楽しめる。

 

彗星(ほうきぼし)の話

 

作品No:18

著者:豊島与志雄

(とよしま よしお)

 

所要時間:約3分

 

 

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ハイライト

 ケメトスは一生懸命になって、高い所から飛び下りる練習をいたしました。野山を駆け廻ったり、木によじ登ったり、いたずらばかりしていたものですから、大変身軽になっていました。一年もたつうちには、ちょっとした呼吸でもって、屋根や木の枝やその他の高い所から、わけなく飛び下りられるようになりました。
「ケメトスは鳥の生れ変わりだ」などと言って、近所の人達は驚いていました。彼はますます得意になって、その技を練習いたしました。

 作品について

 幼い頃から乱暴ものだったケメトス。ある時祖父に自分が誕生した時の話を聞かされ、飛び降りに専念するようになる。その特技から出世したケメトスは、諸国の王の前で100m近い高さの塔から飛び降りることにした。

 

透明猫

 

作品No:17

著者:海野十三

(うんの じゅうざ)

 

所要時間:約7分

 

 

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 青二はぎくりとした。というのは、猫のないたのは彼が草むらの方へ顔をつきだしているそのすぐ鼻の先ともいっていいほどの近くだったからである。
 しかも、猫の姿は見えなかった。
 青二は、うしろへ身をひいて、顔色をかえた。ふしぎなこともあればあるものだ。たしかに猫のなき声がするのに姿が見えないのである。
「にゃーおん」猫はまたないた。青二は、ぶるっとふるえた。彼は、あることを思いついたのだ。

 作品について

 青二は草むらで声はすれども姿の見えない猫を発見した。家に連れて帰るが、やがて彼の体も透明になっていってしまう。母に見つかるのを恐れて家を飛び出した青二は、街である男に出会う。

 

どんぐりと山猫

 

作品No:16

著者:宮沢賢治

(みやざわ けんじ)

 

所要時間:約6分

 

 

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山猫はひげをぴんとひっぱって、腹をつき出して言いました。

「こんにちは、よくいらっしゃいました。じつはおとといから、めんどうなあらそいがおこって、ちょっと裁判にこまりましたので、あなたのお考えを、うかがいたいとおもいましたのです。まあ、ゆっくり、おやすみください。じき、どんぐりどもがまいりましょう。どうもまい、この裁判でくるしみます。」

 作品について

 宮沢賢治の代表作のひとつとして知られている作品。

誰が一番偉いのかというどんぐりたちの争いを解決するために、山猫から呼び出された一郎。毎年繰り返されるという裁判に辟易する山猫に対し、一郎はあるアドバイスをする。

 

白椿

 

作品No:15

著者:夢野久作

(ゆめの きゅうさく)

 

所要時間:約4分

 

 

 

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ちえ子さんはそれを見ると、「ああ、こんな花になったらいいだろう。学校にも何にも行かずに、花が咲いて人から可愛がられる。ああ、花になりたい」と思いながら、その花に顔を近づけてにおいをいでみました。
 その白椿の香気のいい事、眼もくらむようでした。思わずせ返って、
「ハックシン」
 と大きなくしゃみを一つして、フッと眼を開いてみると、どうでしょう。

 作品について

 勉強嫌いのちえ子は、ある日勉強を投げ出して庭の白い椿に見とれていた。すると、くしゃみをした途端にその椿と入れ替わってしまう。 椿の一輪挿しとして勉強机に飾られたちえ子は、入れ替わったその子の振る舞いを見てひとつの考えにいたる。

 なお、終わりに出てくる「総甲」という表現は、当時最も良い成績を表す「甲」の意である。

 

死体蝋燭

 

作品No:14

著者:小酒井不木

(こさかい ふぼく)

 

所要時間:約6分

 

 

 

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「時に法信!」
 しばらくの後、和尚は突然あらたまった口調で、法信の方に向き直って言った。
「今夜わしは、阿弥陀様の前で、お前に懺悔ざんげをしなければならぬことがある。わしは今、世にも恐ろしいわしの罪をお前に白状しようと思う。幸いこの暴風雨では、誰にきかれる憂いもない。耳をさらえてよく聞いておくれよ」
 和尚はその眼をぎろりと輝かして一段声を高めた。

 作品について

 蒸し暑い暴風雨の夜の、小坊主を前にした和尚の告白。手燭の蝋燭は、先の小坊主を殺し、肉をはぎ、その脂肪から作ったものという。その死体蝋燭が、今宵で尽きる…。

 緊迫感と不気味さのある描写と、どんでん返しが妙味の秀作。

 

二銭銅貨

 

作品No:13

著者:黒島伝治

(くろしまでんじ)

 

所要時間:約3分

 

 

 

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ハイライト

「なんぼぞな?」
「一本、十銭よな。その短い分なら八銭にしといてあげまさ。」
「八銭に……」
「へえ。」
「そんなら、この短いんでよろしいワ。」
 そして母は、十銭渡して二銭銅貨を一ツ釣銭に貰った。なんだか二銭儲けたような気がして嬉しかった。

 作品について

 1926(大正15)年1月、『文芸戦線』に「銅貨二銭」として掲載。わずか二銭の倹約がもとで六歳の子供の死を招いてしまう貧農の生活を淡々と、リアリズムに徹して描いている。

(青空文庫の大野裕による作品紹介文より)

 

 

作品No:12

著者:モオパッサン

秋田滋 訳

 

所要時間:約8分

 

 

 

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ハイライト

「死刑だ!」
「死刑にしろ!」
 傍聴人たちは口々にそう叫びだした。裁判長はそれを静めるために並々ならぬ骨を折った。かくて法廷が再び静粛になると、裁判長は厳かな口調でこう訊いた。
「被告には、申し開きになるようなことで、何か云っておきたいことはないかね」
 弁護人をつけることを嫌って、何と云っても附けさせなかったクールバタイユは、そこで、やおら立ち上った。

 作品について

 墓を暴き、女の遺体を取り出した青年が裁判にかけられた。 供述の中で、青年クールバタイユはその女が自分の愛人だったことを話す。

 愛と死という人類普遍のテーマを短編の中で克明に描き出した名作。

 

一房の葡萄

 

作品No:11

著者:有島武郎

(ありしまたけお)

 

所要時間:約7分

 

 

 

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ハイライト

天気は冬が来る前の秋によくあるように空の奥の奥まで見すかされそうにれわたった日でした。僕達は先生と一緒に弁当をたべましたが、その楽しみな弁当の最中でも僕の心はなんだか落着かないで、その日の空とはうらはらに暗かったのです。僕は自分一人で考えこんでいました。たれかが気がついて見たら、顔も屹度きっと青かったかも知れません。僕はジムの絵具がほしくってほしくってたまらなくなってしまったのです。胸が痛むほどほしくなってしまったのです。

 作品について

 有島武郎の代表作の一つ。

絵の具を盗んだ少年の心の葛藤と、それに対する教師の諭しを描いた作品。

色彩感のある描写と、少年の心情が繊細にあらわれる文章力が魅力。

 


 

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