科学の研究

毒を取り続ければ免疫が出来るか?

体にとって有害なものをわざと少量摂取することによってそれへの抵抗力をつけることができる。「免疫抗体」と呼ばれるものだ。結核や破傷風などのワクチンがそうだし、一度牛痘にかかった人は天然痘にかからないというので昔は牛痘を植えたりしていた。「毒をもって毒を制す」というわけだが、ホンモノの毒、例えばフグのテトロドトキシンなどはどうだろう。
分子量の小さな毒が体内に入ると「薬物代謝酵素」というものが生まれる。この酵素は体内の物質を変化させて他の物質に変え水に溶けやすくしたりする働きがあり、毒を中和してくれる。つまり弱い毒ならば免疫ができてその毒に対する抵抗力もつく。 しかしフグ毒の威力は半端なものではない。強い奴だとわずか0.000005gで人を殺すことができる。少量とかそういう問題ではないのだ。 もちろん青酸カリや砒素などの分子量の大きな毒も無理だ。
結局、もともと即効性の殺傷力があるような毒に対しては有効な免疫を作ることができないようだ。
不思議なグリセリンの結晶

グリセリンはアルコールの一種で化粧品や医薬品、爆薬のニトログリセリンなど工業一般で広く使われている物質だ。
この物質は250年程前に発見されているが、それから数十年間全く結晶化させることができず、結晶化は不可能と思われてきた。
通常液体を加熱してから冷やせば結晶を取り出すことができるのだが、グリセリンに限ってどうしてもできなかったのだ。
しかし19世紀初頭に驚くべき出来事が起こった。一樽のグリセリンがウィーンからロンドンに運ばれる途中突然結晶化したのである。 もちろん世界中の科学者たちがこのグリセリンを欲しがった。ところが、この日から不思議な現象が起こり始めた。世界中の工場や実験室で種の結晶も入れてないのにグリセリンが一斉に結晶化したのだ。製造方法も環境も今までと同じだったので、全世界の研究者が首を傾げたという。
今では17℃に冷やすだけで誰でも簡単に結晶ができてしまう。 後々まで語り継がれることになった珍現象である。
「エイズで死ぬ」は厳密に言うと間違い


これまで人類は様々な病気を征服してきた。 ペニシリンの発見によってしょう紅熱や破傷風などは死に至る病ではなくなった。 結核は十数年前までは死の病と恐れられてきたが、今ではワクチンでかなりの程度予防することができる。 医学の進歩は治らないと思われてきた病気や疾患に次々と打ち勝っている。
だが、1985年ごろに発見され今もって爆発的な増加率を見せているエイズ―Acquired Immune Deficiency
Syndrome、後天性免疫不全症候群―に対する有効な治療法は確立されていない。 エイズは知ってのとおりヒト免疫不全ウイルス、HIVによって免疫系の働きが損なわれる病気である。 ここでエイズの基本的な発症経緯を復習しておきたい。
私たちの体には細菌やウイルス※から身を守る免疫機構があり、それをおもに担っているのが「ヘルパーT細胞」(以下HT細胞)と呼ばれるリンパ球の一つである。HIVはこのHT細胞の表面にあるタンパク質にくっつき細胞内に侵入する。 そして長い潜伏期間―10年ぐらいが平均といわれる―の後そこで自らのコピーを作り増殖し、宿主細胞を破壊して別のHT細胞に侵入、といった経緯を繰り返しどんどん増えていく。 だが、このHIVの破壊活動そのもので死に至る事はない。 問題は免疫機能が低下したことにより起こる「日和見感染症」である。 日和見感染症とは免疫機能が損なわれたことにより普段はなんでもない病気にかかってしまうことをいう。 いわば警察のいない無法地帯と化すのである。
日和見感染症は20以上の種類が知られているが、代表的なものにカリニ肺炎や結核、髄膜炎やヘルペスなどがある。 また日本人はサイトメガロウイルスという失明をもたらすウイルスに感染することも多い。
エイズの感染経路は大きく3っつある。血液感染、性行為による感染、母子感染である。エイズ患者の多いアメリカでは男性同性愛による感染率が最も高い。だが、日本では過去の統計では7割以上が血友病患者であった。 血友病は血液中にある血液凝固因子が足りないため出血するとなかなか血がとまらなくなる病気である。
それを治療する薬としてアメリカから輸入していたのが「非加熱血液製剤」で、これにより血友病患者の感染率が激増した。血液製剤はアメリカで売血によって集められた血液から作られており、血液提供者の中に1人でもエイズ感染者がいればそこから作られた製剤は全てエイズに汚染されてしまう。
日本の血友病患者はこの製剤を使わされ続け、5千人の血友病患者のうちなんと2千人がエイズに感染するという驚怒すべき事態となった。今も彼らはエイズやエイズの発病の恐れと戦っている。
エイズについての正しい知識教育が学校などですすめらているにもかかわらず、エイズ患者に対する偏見や差別はなくなっていない。 エイズは感染力の弱いウイルスなので上に示した3っつの経路以外から感染することはない。日常生活で感染することはなく、患者に対する差別などあってはならないことだ。
そしてもし自分が感染したと思うときはすぐに検査を受けるべきである。 感染していたときも正しい治療を受けるなら発病をかなり遅らせることができる。 また家族や愛する人にうつさないよう自分から予防措置を講じることが必要だ。 感染者の家族ならば必ず支えになってあげなければならない。それと同時に感染を広げないよう注意をすることも大切だ。
いずれにせよ私たち一人一人がエイズについて正しい知識を持ち、感染が広がらないよう努めるべきである。
※細菌とウイルスの違いについては「難しい雑学の解剖」参照。
オゾン層を破壊しているのはフロンではない!?

オゾン層の破壊と地球温暖化といえば世界中が声を大にしている問題である。 とりわけオゾン層は太陽からの紫外線を防いでくれるという重要な役割を担っている。 オゾン層が薄くなって強い紫外線が直接肌に当たるようになると皮膚ガンやその他の病気にかかりやすくなるのだ。
このオゾン層を破壊する元凶といえばフロンガスと思われている。 もちろんこれはこれで間違いではないのだが、厳密に言えばフロンそのものがオゾンを破壊するわけではない。
フロンは空気より重い物質だが、大気の対流によって上空のオゾン層付近まで届く。フロンは安定した物質なのでこのままではどうといことはない。ところが、紫外線に当ると塩素に分解される。この塩素がオゾン層を破壊するのだ。 オゾンはO3つまり酸素分子が3個つながっている物質だ。酸素分子は塩素と結びつきやすく、塩素と次々に結合してしまう。こうして連鎖反応が起こり、1個の塩素分子で1万個ものオゾンを破壊してしまうのである。 しかも塩素は空気より軽いのでなかなか降りてこない。被害は拡大するばかりである。
ちなみに破壊されたオゾン層は少しずつ自己修復する。しかし完全に元通りになるのは50年後とも500年後とも言われ、はっきりしたことはわからない。
一日が遅くなっている!?

私たちが毎朝太陽の光で起こされ、夜は夜で落ち着いた雰囲気で眠ることができるのも地球が自転しているお陰である。
天体の運行の例にもれず、自転は安定しているのでこれを元に時間の基準が決められていた時期もあった。 だが、安定しているといっても完璧ではない。星座の位置が何万年と経つうち変わるように、地球の自転もまた遅くなりつつあるのだ。
地球のみならず宇宙にある星々はほとんど自転しているが、これはいわば回されたコマと同じこと。徐々に回転が遅くなっていつかは止まってしまうのである。
地球ができた頃は、1日が10時間にも満たない程度だった。これが長い年月経つうち延びてきて現在の24時間になったわけだ。 遅くなる割合は100年に1/1000秒ほど。 大したことないと思われるかもしれないが、このせいでうるう年ならぬうるう秒を挿入したりと色々大変なのである。
今からまた何万年もすると、一日の長さは30時間くらいになるかもしれない。時間が立つのが早くて困るという人はその時代に生まれたかった?
電車から飛び降りるときは…

できれば実際にやりたくないことこの上ないが、普通映画などでは電車から飛び降りるとき進行方向に飛んでいることにお気づきだろうか。 進行方向に飛び降りるのはいかにも正しく思える。 同一方向に同速度で進む二つの物体は互いに対して静止状態にある、そんな理論が頭をかすめる。
だがよく考えてみればこの行為は「電車の速度+飛び降りるときの速度」であることに他ならない。当然衝撃は大きくなるはずである。 ではなぜ進行方向にとぶのか?
カメラやビンなど、壊れやすいものをできるだけ衝撃を少ないように電車から投げるにはどうしたらよいだろう。もちろん、進行方向と正反対に力いっぱい投げるのがよい。「電車の速度−投げた速度」で衝撃は少なくなるだろう。 実は、人間でも反対方向に飛び降りた方がショックは少ない。しかしそれでは受身が取れなくなってしまうのだ。進行方向に飛べば前のめりに転がって受身を取りやすい。だが反対に飛べば体は後ろを向いている。倒れるときに危険なのだ。
従って、電車からの正しい飛び降り方は、まず電車の最後尾まで全力で走りジャンプ、それと同時に体を180度回転させる。こうすれば電車の速度を殺せるし着地のときも受身を取りやすいという訳だ。
ただし実際にやって怪我をしても例によって当方は一切責任を負いませんので、あしからず。
磁石はどうして鉄を引き寄せるのか?


素朴だが難しい疑問の典型か。子供の頃から気になっていて、今でもやっぱりよくわからないという方もおられるだろう。 自分の子供に聞かれて困ってしまったという人もいるかもしれない。 確かにこれは少々難しいのである。原子レベルでの働きがあるので子供に聞かれてもなかなか答えられないのだ。ここではその長年の疑問をできるだけわかりやすく解説したいと思う。
永久磁石である棒磁石を適当な長さで切ってみると、両端に再びN極とS極ができる。 こういった実験は学校でやった事があるかもしれない。 そしてこれを更に短く切って・・・ということを繰り返してみる。なんと、砂粒ほどの大きさになっても磁石のままなのである。

磁石のことを「強磁性体」ともいう。強磁性体は磁石もしくは磁石になりうる物質、早い話が磁石にくっつく物である。代表的な金属は鉄・ニッケル・コバルトの3種。 といっても普通は鉄しか目にしないだろう。
ではこれらは他の金属とどこが違うのか?それは原子を構成している電子の回り方。 普通、原子核の周りを電子はランダムに運動している。 そのため電子の位置を特定するのは不可能だ。しかし鉄などの原子では、電子が同じ向きに回転するのである。
例えれば普通の電子は校庭をでたらめに走り回っているのに対し、鉄の電子はトラックを周回している状態だ。 電子が同じ向きに回転し続けると、ちょうどコイルに電流を流したのと同じ現象が起こる。つまり磁場が発生するのだ。 そう、これこそが永久磁石の磁気の正体である。 永久磁石も原子レベルでは電磁石と同じ原理なのだ。
そしてこの原子の向きを同一方向に揃えると、それだけ磁気が強くなり我々が目にする磁石になる。 揃っていないものが釘など普通の鉄※なのだ。
磁石に釘を何本か連ねてくっつける、という実験をご存知だろう。あの状態は釘を構成している原子の向きが一時的にそろって、一時磁石になるために起こる。
ここまでで一応磁石の仕組みは解明したが、しかしここで新たな疑問がわいてくる。 いわく、釘は一時磁石にしかならないのに永久磁石はなぜ磁力を保ち続けられるのか?磁石を熱すると磁力がなくなってしまうのはなぜか? これらの疑問は「難しい雑学」で扱いたいと思う。 磁石は奥が深いのだ・・・
※鉄に限らず強磁性体はみなそうだが、ここでは強磁性体の代表として鉄を挙げた。
電子レンジの仕組み

今ではすっかり調理に欠かせないものとなっている電子レンジ。レンジがなかった時代が想像できなくなるほど当たり前になり、普及している。
しかし、そんな電子レンジが一体どうやって食品を温めているかご存知だろうか。 一見サウナのような光を出す箱の中で食品がグルグル回るだけである。それで温まるのだから不思議だ。 しかも食べ物と離れている容器はほとんど熱くなっていない。
物が温まるという事はその物質を構成している分子の運動が活発になるということである。 普通の状態でも分子は少し運動しているが、コンロなどにかけられて熱エネルギーをもらうと、さらに活発に運動するようになる。 つまり分子を運動させれば温まるわけだ。 なんのことはない、走った後は体が熱くなるのと同じことである。
分子運動を活発にする方法は色々ある。火にかけるのは手っ取り早いし、カナヅチで石を叩くと熱くなる、あれも同じことだ。 電子レンジは「マイクロ波」と呼ばれる電磁波を照射することで分子運動を強めている。 マイクロ波は水の分子に作用し、運動を活発にする働きがある。だから水分を含んだ食品を温める事ができるのだ。 お皿などが温まらないのは水分子があまり入っていないためである。
−まあ、こんなことを知らなくても、今日もママは冷凍食品を笑顔で食卓に出せるのである。
ドライアイスでやけどするはずない

学生のころ給食でアイスが出た事があるだろうか。 私の学校ではアイスの入っている入れ物には必ずドライアイスもついていて、ドライアイスを水の入ったバケツにいれてボコボコ、なんてことをやっていた記憶がある。
そんなときにまことしやかに流れていたのが「ドライアイスに触ると低温ヤケドをする」という噂だった。 冷たいドライアイスでヤケドなんかするのかなと思っても、実際に試してみるのは怖いのと低温ヤケドだと言われるとああそうなんかなと納得してしまったものだった。
だが常識で考えてみればヤケドというのは熱さでできるもの。間違っても冷たいヤケドなんてあるはずがない。二酸化炭素の固体であるドライアイスの温度は摂氏−72℃前後で、我々の身近にあるものの中ではかなり冷たい部類にはいる。 そんなものでヤケドするわけがない。 低温ヤケドというのはこたつでうたたねしたりカイロを長時間同じところに当て続けたりするとなるもので、冷たいからなるのでは断じてない。
従って、ドライアイスを触り続けて起こるのは当然凍傷。極度のしもやけである。
ということはヤケドをしたらドライアイスで冷やすのが一番!?でもヤケドなのか凍傷なのかわからなくなったりして。